大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸家庭裁判所 昭和36年(家)374号 審判

申立人 坂均(仮名)

未成年者 坂淳(仮名)

主文

下記の者が未成年者東薫を養子とすることを許可する。

国籍 アメリカ合衆国メリーランド州

住所 アメリカ合衆国メリーランド州、アバーデイーン、プロービング、グラウンドオーデイナンスカンパニイ九四

養父となるべき者 ジェームス、リチャード、レインズ

西暦一九一六年五月六日生

養母となるべき者 マサコ、レインズ

西暦一九三一年四月一一日生

理由

当裁判所の事実調査の結果によると、

一、未成年者は、その母山下洋子と某アメリカ軍人との間に生れた子であるが、父母ともに所在不明であること。

二、申立人の妹とし子が前記山下洋子と友人であつたところから、申立人の母ヨキが未成年者を養子とし、同人死後申立人が後見人に就任して今日に至つていること。

三、未成年者は現在申立人方に同居して小学校に通学中であるが、容貌体格等アメリカ人の外見をそなえていること。

四、申立人の妹とし子は米軍人ジェームス、リチャード、レインズと結婚して在米中であるが、未成年者将来のため同人を自己夫婦の養子として引取りたい意向を持ち、同人の夫は真面目な軍人であり、生活も安定し、夫妻いずれも事件本人の養親として相当であること。

を認めることができ、これらの事実からすれば、本件養子縁組は未成年者の将来の幸福のため望ましいものであるというべきである。そして日米両国の国際私法に基き、養親たるべき者の本国法であるアメリカ合衆国メリーランド州法並びに未成年者の本国法であるわが民法によつても両者の縁組につき障害となる事由は見出だされない。もつとも同州法によれば養子となるべき者が実際に同州内にいることが縁組の前提条件とされているけれども、本件において未成年者は当裁判所の許可があり次第渡航手続をとり、レインズ夫妻に引取られる予定になつているのであるから同州法にいう上記前提条件はみたされるものと考えるべきである。よつて本件養子縁組許可の申立は相当の理由があるものと認め、主文のとおり審判する。

(家事審判官 坂東治)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例